【設計サプリ】その10 (加工しやすい図面の描き方)
[掲載日]2021.12.15【加工がしやすくなる形状を紹介します】
設計者の皆様
いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
このページでは
私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第10回目は「加工しやすい図面の描き方」です。
設計者の皆様は加工しやすく描かれた図面とはどのような図面と思われるでしょうか。
・寸法が見やすい
・加工が簡単
・測定がしやすい
などが挙げられると思いますが、ここでは「加工が簡単」という視点から加工しやすい図面を11の事例で紹介します。
(1) バリの出ない形状
鋳物などニアネットシェイプで製品を設計するとき、精度面には加工代を考える必要があります。
この加工代を削るとバリが出てしまいますが、図1のような形状で設計するとバリが軽減されます。
さらに図2のような形状にするとほとんどバリが出ません。
図1 図2
(2) 肉盗みの利用
図3のように下面が基準面、上面が加工面とした場合、クランプ面は左右となります。
このクランプ方法ですと基準面が浮いてしまう恐れがあり、加工品位に影響します。
そこで、肉盗みを設けたところを図4のようにクランプ面とすると加工品位が向上します。
肉盗みを設計される際は平座になるように設計されることをお勧めします。
図3 図4
(3) リブの形状
図5のようなリブ形状を設計されるとき、壁の倒れが発生します。
L/D=10を超える場合は図6のように根本をL/D=10以下になるようにテーパーを付けることをお勧めします。
このとき底にR1以下でR形状を許容いただくと加工方法の選択肢が広がり加工がしやすくなります。
図5 図6
(4) コーナーr
段付き丸棒を設計される場合は付け根にR0.5以上のr形状を付けることをお勧めします。
理由は設計サプリ2(コーナーrでコストダウン)を参照ください。
図7 図8
(5) ヒンジアーム
ヒンジアーム部品を設計されるときはL/t=5以下になるように設計されることをお勧めします。
理由は設計サプリ4(ヒンジアーム部品の設計方法)を参照ください。
図9 図10
(6) 止まり穴の底
止まり穴を設計されるときにドリル先端部の壁厚が薄いと反対側に膨れが発生します。
膨れがNGの場合はこの壁厚を1㎜以上になるように設計してください。
図11 図12
(7) センターもみ
丸棒形状を設計されるとき、端面にセンターもみを設計されることをお勧めします。
理由は設計サプリ3(センターもみの威力)を参照ください。
図13 図14
(8) タップの深さ
タップの深さは深すぎると加工中に折れるリスクが高まります。M×2程度の深さをお勧めします。
詳しくは設計サプリ7(ネジ穴の製図方法)を参照ください。
図15 図16
(9) 穴の抜け側の形状
図17のように穴の抜け側が傾斜になっていると切削抵抗のバランスが悪くなり、ドリル穴が倒れてしまいます。
図18のような形状に変更いただけるとこの問題は改善します。
図17 図18
(10)座繰り穴の側壁
図19のように座繰り穴の側壁が薄いと外側に膨れが発生します。
この場合図20のようにしていただくと改善できます。
図19 図20
(11)R面の穴
図21のようにR面または傾斜面に穴を設計するとき、入口にRを付けたくなります。
3次元CADであれば簡単に付けられます。
しかし、加工するとなると曲面加工になるため厄介です。
できるだけ図22のような形状で設計されることをお勧めします。
単純な加工の集まりになるため加工が容易になります。
図21 図22
【この記事を書いた人】
稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
工作機械も一通り使ってきましたが、最近はコストプラン、センサーを使った工場の見える化、インサイドセールスにも取り組んでいます。
(現在の主な使用ツール)
Rhinoceros
Fusion360
Ansys
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弊社ではロストワックス精密鋳造品を主としたニアネットシェイプ素材の切削加工、研磨加工、放電加工を受託加工しています。
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