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2D図面からの3Dモデリング(BOTTLEモデリングに挑戦)| 設計サプリNO,49

[掲載日]2025.03.17

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設計者のみなさま、いつもお世話になっております。

株式会社ナカサ見積り担当です。
弊社では、私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第49回目は「2D図面からの3Dモデリング(Bottleモデリングに挑戦)」です。

設計者のみなさまは2Dのスケッチ画や2DのCAD図から3Dモデルを作成されることはあるでしょうか。
曲面の多い3Dモデリングはてこずることが多いので厄介ですよね。
今回はRhinocerosというCADのトレーニングマニュアルに掲載されている例題を参考に洗剤Bottleの2D図面から3Dモデリングに挑戦した事例を紹介します。

Rhinocerosとは

Rhinocerosとは1999年にver.1が発表された3次元CADです。
サーフェスモデリングに特徴があり、プロダクトモデリングや金型、建築分野でも利用されています。

市販されている参考書も多く、手に取られた設計者のみなさまも多いのではないでしょうか。
今回の記事は無償で公開されているトレーニングマニュアル(Rhino 6 Level 2 Training)から洗剤Bottleの例題に取り組みましたので紹介します。
残念ながらこのトレーニングマニュアルには手順は最初の方しか掲載されていませんので残りは自力でやってみます。

用語の説明

取り組み事例の紹介の前に記事で使用する用語の説明を下記します。

曲率

曲率とは曲線の曲がり具合を表す数値で1/Rで表します。
曲がりが緩やかですと曲率は小さく、曲がりがきついほど曲率は大きくなります。
Rhinoceros ではCurvatureGraphというコマンドで表示することができます。

オープンエッジ

オープンエッジとは閉じていない(他のエッジとつながっていない)サーフェスのことを言います。
オープンエッジがあるとフィレットがかからなかったり、ブーリアン演算できなかったりするなどモデリング作業時にエラーとなる原因となります。
ShowEdgesというコマンドで表示することができます。

ワイヤーフレーム

ワイヤーフレームとは1本の線または複数の線の集合体のことを言います。
曲面の多い3Dモデリングではねぶた灯篭をイメージして作りますが、ねぶた灯篭で言う骨組みの部分です。

曲線ネットワーク

曲線ネットワークとは複数の交差する曲線からサーフェスを貼る機能を言います。
ねぶた灯篭の骨組みに一枚一枚紙を貼っていくような機能です。
NetworkSrfというコマンドを使います。

非多様体

非多様体とは「許されないソリッド」のことを言います。
オープンエッジと同様にモデリングするなかで発生することがありエラーになる原因となります。ShowEdges とSelBadObjectsというコマンドで表示することができます。

その他の用語については知っておくと役に立つ3次元形状(自由曲面)の作り方と注意点|設計サプリNO,28でも紹介しています。

洗剤Bottleの3Dモデリング

トレーニングマニュアルと一緒に例題の2D図面がダウロードできますのでそれを基にモデリングしていきます。
最終的に金型用の3Dモデルを作るという想定で作業をします。

例題の2D図面を観察

用意されている2D図面をみると3方向の図面(3面図)が描かれています。

曲面の多い形状の2D図面は3面が不整合の場合が多く、すべての線画に合わせてモデルを作成することはできません。
できるだけ線画に合うようにしますが、どの線画を使ってどの線画を使わないかを決めておく必要があります。
この例題では外形線は3面すべてを利用し、その他はfrontの線画のみ利用する方針で作業を進めます。

 

2D線画を3D上に起こす

平面上に描かれている2Dの線画を3Dに起こしていきます。
回転コマンドを使って起こしますが、その前にコーナーRは外してエッジにしておきます。

位置を合わせやすくする為です。

つづいてBottleの外形となる線を組み立てていきます。

組み立てると端点が合っていない箇所が出てきます。
その場合は制御点を移動して合わせます。

とりあえずサーフェスを貼ってみる

3Dのワイヤーフレームができたらサーフェスを貼ってみます。
このような形状は曲線ネットワークで貼った方が良いでしょう。

サーフェスを貼ったら全体のフォルムを確認してイメージ通りでしたら次に進みます。
ここまではトレーニングマニュアルにも記載されています。

参考文献:Rhino 6 Level2 トレーニングガイドとモデル (日本語版)https://www.applicraft.com/trainingdata-download/

ねぶた灯篭を作る

次に取っ手のモデリングを行います。
用意されている2D図面から取っ手の形状になる手がかりを探します。
しかしこの2D図面からは取っ手の断面に相当する形状の手がかりは見つけることができませんでした。
スーパーなどにある洗剤Bottleを観察しイメージする必要がありそうです。

実物の洗剤Bottleを参考にサーフェスを貼りますが、サーフェスを貼る作業はねぶた灯篭を作るイメージと同じです。
どのような骨組み(ワイヤーフレーム)を作るかで後のサーフェスの品質に大きく影響します。
うまく作らないとエラーで先に進めなくなります。
複数の案を並行して進めた方が良いでしょう。

今回はA案とB案、C案を考えました。
結果として取っ手部分はC案のワイヤーフレームを採用しました。

左からA案、B案、C案

サーフェスを貼る

完成したワイヤーフレームを使ってサーフェスを貼ります。
ここでは曲線ネットワークとスイープを組み合わせています。

サーフェスを貼るとワイヤーフレームを修正するを繰り返す

取っ手部分のサーフェスが完成したら外形サーフェスと交差する部分をトリム(切り取り)した後、結合させてオープンエッジがないことを確認します。

オープンエッジがある場合はサーフェスを貼る許容差やエッジマッチングを変更したり、サーフェス同士をマッチングしたりします。
オープンエッジが無くなったらエッジにフィレットをかけます(R5程度)

ここでうまくフィレットがかからない場合があります。
その場合はワイヤーフレームを見直します。
曲率が大きいワイヤーフレームがある場合は小さく修正します。
ここはモデリングする中で重要なところなので根気つよく作業します。
フィレットがかかったら次の作業に進みます。

トップ形状を作る

注口につながるトップ形状を作成します。
2D図面の線画を参照しながらワイヤーフレームを作ります。
サーフェスは曲線ネットワークで作りました。
本体(外形サーフェス)とのつなぎ目にエッジがある場合はフィレットをかけてぼかしておきます。

くぼみを作る

本体には窪みがありますので作っていきます。
2D図面の線画を少し延長した状態で、先に作成した外形サーフェスに投影します。

投影したワイヤーフレームをつかって切断し、2㎜程度内側にオフセットさせてスイープで隙間を塞ぎます。

このとき、サーフェスがよじれることがあるのでスラッシュという機能を使ってよじれを最小限にします。

左:スラッシュ無 右:スラッシュ有

サーフェスが貼れたら結合してオープンエッジが無いか確認します。
オープンエッジが無いこと確認したらエッジにフィレットをかけます(R2程度)

底形状を作る

2D図面にはありませんが底にも窪みがありますので作成します。
断面形状を作成してスイープで外径ラインに沿ってサーフェスを作ります。

残りの開口部は平面形状ですのでcapコマンドで埋めます。

ネジ形状を作る

最後にネジ形状を作ります。
スパイラルコマンドにてネジの軌道を作成し、三角の断面形状をスイープしてネジ形状を作成します。

金型を作る

完成したら全体を結合させてオープンエッジが無いことを確認します。

今回は金型用の3D モデルを作ることを想定しましたので、適当な四角いブロックを作成し、ブーリアン演算の差を使って金型形状を作ります。
問題なく金型形状ができれば作業終了です。

左:ブーリアン演算前 右:ブーリアン演算後

3Dモデルを完成させるためには

曲面が多い3Dモデルは作成中に破損オブジェクト(badedgeや非多様体)が出来てうまくブーリアン演算出来ない事象が発生します。
ブーリアン演算する元または相手側の形状を公差に影響しない範囲(0.001くらい)動かすと改善することがあるので直ぐにあきらめずに根気つよく作業しましょう。

CADデータについてはお問い合わせください

弊社では3D形状の加工品を多く取り扱います。
CADデータ作成からでも対応できますのでお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせは下記フォームがご利用になれます。

【この記事を書いた人】

稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
ファクトリー・サイエンティスト No,00385
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。

【過去に書いた記事】

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