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トグルクランプの計算と実測を比較 | 設計サプリNO,48

[掲載日]2025.02.17

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設計者のみなさま、いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
弊社では、私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第48回目は「トグルクランプの計算と実測を比較」です。

設計者のみなさまはトグルクランプを自身の設計で使われたことがあるでしょうか。
トグルクランプは小さな入力で大きな出力が得られる便利な機構部品です。
安価でもあるので利用機会も多いと思います。

今回はトグルクランプについてクランプ力の計算と実測を比較した事例を紹介します。

トグルクランプとは

トグルクランプのトグルとはオン/オフを切り替えるという意味で、写真のような姿をしています。

組み立て治具や溶接治具、検査治具など製品を保持する目的で良く使用されますよね。
トグルクランプにもいくつか種類がありますが、今回の記事では代表的な下面押さえタイプについて紹介します。

トグルクランプの計算方法

下面押さえトグルクランプの計算方法は取り出す力をPo。与えられた力をPiとした場合以下の式で求めることができます。

Po=Pi×ℓ1/ℓ2/sinθ×L2/L1——-(1)

参考文献:治具取付具の自動化図集 P12,P13 株式会社大河出版発行

トグルクランプの力を増幅されるポイントは「てこの原理」に加え、θが小さくなると得られる「クサビ増力効果」です。
例として上記の(1)式の
L1= 69.9 mm
L2= 23.4 mm
ℓ1=119.4 mm
ℓ2= 50.8 mm
θ= 2 °

とした場合、増力効果は約22倍になります。

てこの原理とは

てこの原理は支点を中心とした回転運動によって、力点P2に力を加えた分、作用点P1に大きな力を加えることができる原理です。
モーメントの総和はゼロという考え方から、P1×ℓ1=P2×ℓ2とすると、ℓ1がℓ2の半分になれば、P1はP2の2倍になり力を増幅させることができます。

クサビ増力効果とは

クサビ効果とは力の合成と分解で説明できます。
一般に、下記 のような力 F を,互いに垂直な2方向に分解するとき,それぞれの成分
は F cosθ,F sinθとなります。’θが小さいとF sinθは小さくなり、F cosθは大きくなっていきます。
よって入力側をF sinθとした場合F sinθが小さな力でもF cosθは大きな力を取り出すことができます。

実測して計算結果と比較

上記(1)式の計算結果が実測とどのくらい違うのか以下示す実験器具を使って計測したので紹介します。

実験方法

市販の下面押しトグルクランプはクランプするゴム付ボルトの位置を調整できるので、上記(1)式のL1を3通りに変化させて測定し、計算値と比較することにしました。
与えられた力(N)と取り出す力(N)はフォースゲージで測定しています。
条件は下記の通りです。
L1= グラフに記載(3通り)
L2= 23.4 mm
ℓ1=120 mm
ℓ2= 50.8 mm
θ= 2 °
Pi=フォースゲージにて測定(ピーク値)

実験結果

結果を以下に示します。
3回実測を行った結果、いずれも傾向は同じですが実測値は計算値と大きく差があるようです。
これはゴム付ボルトのゴムによる力の吸収が要因のひとつと考えられます。


六角穴付きボルトで実測

ゴム付ボルトのゴムによる力の吸収を避けるため六角穴付きボルトに取り換えて実測しましたので紹介します。

これを見ますとゴム付ボルトより計算値に近づきましたがまだ差があるようです。

まとめと考察

実務では市販のトグルクランプを購入して使用する場合が多いと思います。
人の手で力を与える場合、作業性を考慮するとPiは50~100Nが良いと思われますので、必要な取り出す力Poを決めたら、与える力Piが50~100N以下になるように(1)式のレバーの長さℓ1と押さえる位置L1を設定し、一番近いトグルクランプを選択すると良いでしょう。
標準で付属するゴム付ボルトを使用すると計算より小さな締め付け力になりますので、六角穴付きボルトなどの力を吸収しない金具を使用するなどして計算値に近づける工夫も必要です。ただし、六角穴付きボルトはゴム付ボルトに比べ長さ調整が難しいです。

また、実験では計算通りに締め付け力が出ていないこともわかりました。
(計算値との差はゴム付ボルトは約4倍、六角穴付きボルトは約2倍)
トグルクランプのアームは締め付けたときの抵抗で浮き上がることやθの誤差があることが計算通りにいかない要因として考えられます。
(1)式を利用されるときは参考にしてください。

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【この記事を書いた人】

稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
ファクトリー・サイエンティスト No,00385
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。

【過去に書いた記事】

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