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電気料金とCo2排出量を知りたいので測定にチャレンジ |  設計サプリNO,37

[掲載日]2024.03.15

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設計者のみなさま、いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
弊社では、私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第37回目は「電気料金とCo2排出量を知りたいので測定にチャレンジ」です。
弊社では見積りするとき、電気料金を計算して提示することはなく、単価の中に含んでいます。
最近では原材料費や電気料金の高騰などで価格の見直しなどご経験され、コストに与える影響について興味を持たれた設計者の方もおられると思います。
この記事では電気料金がどのくらいコストに占めるのかを調べてみましたので紹介します。
さらに最近話題となっているCo2排出量削減についても検討例を紹介します。

はじめに

弊社は従来から性能重視で工作機械を選定し、消費する電力については検討してきませんでした。
しかし、弊社のような加工メーカーが消費するエネルギーのほとんどが電力によるものです。
日本政府は2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すことを表明しています。発電するための電源構成の80%が化石燃料であることも踏まえると、自助努力も必要ですよね。

引用元:高圧および特別高圧の標準料金メニューの見直しについて(別紙PDF6ページ)| 中国電力

この記事では主に使用している工作機械の消費電力を測定。消費割合を明らかにし、加工コストに与える影響を調べた結果とCo2排出量に換算した結果を紹介します。

測定対象

計測対象とする工作機械は2台のマシニングセンターとしました。
選定理由は2台とも同一機種を複数台所有し、主に使用している為です。
また、機械の性能を見る目的ではない為あきらかに電気容量の異なる機種で比較しました。
それぞれの基本仕様を以下に示します。

測定方法

消費電力の測定は電力計を使用するとより正確に測定できますが、今回は電流を測定し電力に換算する方法を試みました。

測定器(クランプセンサー)の取り付けは写真の通りです。

使用する電流計はクランプロガー LR5051(日置電機)を使用しています。

工作機械の電源は三相3線式の為、電力値への換算は2個のクランプセンサーにより測定した電流値から以下のように計算します。

電力W=(電流1+電流2)÷2×電圧×√3×力率

電圧は200V (実測すると205Vくらい)。
力率は一定ではなく負荷が高くなると位相差が大きくなり0.9~0.4程度に変動しますが、平均値に近い0.85一定として計算することにします。

測定項目

測定項目としては以下について行いました。

  • 待機時
  • 主軸を1000rpm~10000rpmまで1000rpmづつ変化させたとき(無負荷)
  • クーラントをON/OFFさせたとき
  • スピンドルスルークーラントをON/OFFさせたとき
  • 主軸を1万rpm回転させながらスピンドルスルークーラントをON/OFFさせたとき
  • クーラントとスピンドルスルークーラントの違いにつては
    【設計サプリ】その16 (ステップドリルの加工時間)を参考にしてください。

    測定結果

    測定(換算)結果を以下に示します。
    2機種の電力の差は2倍から5倍程度でした。

    S○○:回転数rpm

    M8:クーラントon
    M88:スピンドルスルークーラントon

    実際に稼働しているときは複数のモーターが複雑にON/OFFするため、電流値は大きく変動します。しかし実加工の電流値の平均をみると2機種とも上記のS10000+M88とほぼ同じであったため、この数値(S10000+M88)を使って電気料金を計算したいと思います。

    見積額にどのくらい影響するのか

    換算した電力から電力量を求め、電気料金を求めます。
    電力会社からの料金明細をみますと、基本料金や燃料費等調整額、再エネ発電賦課金など加算するもの減算するものありますが、ここでは電力量料金のみで計算します。

    結果CMXを1時間使用した場合152円かかることがわかりました。
    一方ROBODRILLを1時間使用した場合は34円かかることがわかります。

    この差額118円/時間が見積りコストに与える影響は?
    おおざっぱに検討するときは(公財)日本生産性本部が発表しています「2022 年度の日本の時間当たりの名目労働生産性は、5,110 円」から計算します。

    参考元:日本の労働生産性の動向 | (公財)日本生産性本部

    118÷5110≒0.023(2.3%)

    と時間当たり約2.3%影響することがわかります。
    今回の測定から分かったことは品質と効率が担保できるのであればCMXからROBODRILLに変更した場合、約2.3%のコスト削減が期待できると言うことになります。
    (燃料費等調整額などを考慮すると約1.8%)

    Co2排出量に換算

    次にCo2排出量に換算してみます。

    電力量からCo2排出量に換算するには環境省が公開している排出係数を利用するか、電力会社各社が公開している排出係数を利用します。

    参考元: 算定方法・排出係数一覧 | 環境省
         当社のCO2排出係数(調整後排出係数)≪2022年度実績≫ | 中国電力

    中国電力株式会社が公開している0.545 kg-CO2/kWh を使用し計算しますと、

    2機種の電力量の差は3.93kwhでしたので
    3.93kwh×0.545 kg-CO2/kWh=2.14kg
    時間当たり2.14㎏のCo2排出量削減になります。
    年間稼働時間を1920時間とした場合、年間約4109㎏(4.1トン)の排出量削減です。

    4.1トンと言われても良くわからないのでスギの木を植樹した場合で考えると

    466本 を毎年植えていることになります。 なかなかの数値になりました。

    参考元:森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの? | 林野庁

    まとめ

    今回は工作機械の電流値を測定して換算結果から、電気料金とCo2排出量を算出してみました。
    やってみると複雑でした。もっと簡単にできないの?と思われたかもしれません。
    弊社では今後もより簡単に、正確に測定する方法を試行錯誤しながら、コストやCo2排出量に与える影響を調べ削減していきたいと考えています。
    ご意見、ご質問がありましたらお問い合わせください。
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    【この記事を書いた人】

    稲田聡(いなたさとし)
    株式会社ナカサ 開発室長
    ファクトリー・サイエンティスト No,00385
    1966年島根県安来市生まれ
    1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
    1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
    現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。

    【過去に書いた記事】

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