IoTチャレンジ(事例紹介) | 設計サプリNO,35
[掲載日]2024.01.15設計者のみなさま、いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
弊社では、私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第35回目は「IoTチャレンジ(事例紹介)」です。
設計者のみなさまは生産技術系の方も多いかと思います。
みなさまは自社のIoTには取り組んでおられますでしょうか。
数年前から話題となっているIoTですが、何をやったら良いかわからないと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では弊社の取り組み事例を紹介し、取り組みに必要な情報を公開します。
IoTとは
IoTは「Internet of Things」の略でモノのインターネットと訳されています。センサーなどのデータをインターネットを介して見える化し、活用することを総称して呼ばれているようです。
私たち金属加工業で使用する設備にもこのIoTと称した機能やサービスが盛り込まれたり、アプリケーションとして販売されたりしています。
試しにやってみたいがハードルが高い
新しいもの好きの性分として、やってみたいと思うのですが。市販されているサービスやシステムを工場全体に構築するとなると数百万円とビックリするほど費用がかかります。
試しにというレベルでやるにはハードルが高いのが実情です。
自分で作ることにしました
しばらく試行錯誤の結果、自分で作ることにしました。
何を作るかと申しますと、工作機械の稼働と作業者の動きを可視化するシステムです。
構成を下記します。
光センサーと超音波距離センサーによって取得したデータをマイコンを介してクラウドサービスを利用し可視化するものです。
準備したもの
準備した購入品などを紹介します。
光センサー
Grove -Digital Light Sensor
工作機械に付属するパトライトの光を検出するセンサーです。光センサーは検出する光の波長範囲が広いデジタルセンサーを使用します。
アナログ式のものもありますが太陽光の影響を受けやすく上手くデータ取得できなかったためデジタルセンサーを採用しています。
費用は1200円程度
超音波距離センサー
Grove -超音波距離センサモジュール
工作機械の前に作業者が居るか居ないかを検出するセンサーです。
人感センサーも試しましたが、感度が良すぎて上手く検出できなかった為、超音波距離センサーを採用しています。
費用は800円程度
マイコン
Grove -WIO NODE
センサーからの信号を取得し、wifi経由でクラウドサービスにデータをアップロードするArduino互換のマイコンです。
センサーからのデータはそのままアップロードはせず、整形データになるようプログラムしています。
費用は2000円程度
ホルダー、ケース類
センサーやマイコンは保護するケースが必要です。
弊社では専用のケースを設計し3Dプリンターで製作しました。
PBF(粉末床溶融結合)方式の3Dプリンターで造形しています。
その他必要に応じてブラケットやマグネット、スタンドを用意します。
弊社ではダイソーで販売している200円のスマホスタンド(白)を利用しています。
クラウドサービス
azure
クラウドサービスはAmbientやIFTTTなど提供されているサービスが多くありますが、弊社ではazure※とpowerBI※を利用しています。
こちらは月額費用が発生します。
※azureとpowerBIはマイクロソフト社の登録商標です。
Wi-Fi環境
クラウドサービスにデータをアップロードするためにはWi-Fi環境が必要です。
Wi-Fi環境を構築する際はセキュリティー対策も重要ですので、システム管理者と協議の上構築することをおススメします。
運用状況と費用
自作したシステムで可視化した稼働データは以下のようなものです。
グラフの上段が機械稼働、下段が作業者の動作です。右の数値は機械稼働率。
このようなデータをマンマシンチャートと呼んでいます。
作業者が上手に作業をこなせているかや、ベテラン社員と新人社員の動きを比較するなど 複数の機械を比較して改善に活用しています。
このシステムは2022年に運用開始してから2年目になりますが、大きなトラブルなく運用できています。
初期にかかった費用は1工場18台の工作機械に設置して総額55万円程度でした。
現在は25台の工作機械に取り付け運用しています。
センサーの特性を慎重に調べる
自作して最初感じたのはセンサーの特性を調べるのに時間がかかることでした。最初はテスト環境を構築して数種類のセンサーを試し、しばらくデータを取ってどのようにセンサーが反応するかを理解してから、使用するセンサーを決めることをおススメします。
ファクトリーサイエンティストの紹介
今回の記事で紹介した技術は一般社団法人ファクトリーサイエンティスト協会が主催する育成講座をベースにし応用したものです。詳しく知りたい場合はファクトリーサイエンティスト育成講座の受講をご検討ください。
参考元:カリキュラム|一般社団法人ファクトリーサイエンティスト協会
https://www.factoryscientist.com/curriculum
CADデータをダウンロードできます
弊社で設計したマイコンケースと、センサーホルダーのCADデータをダウンロードページよりダウンロードできます。
3Dプリンター用出力データとして参考にご利用ください。
PBF(粉末床溶融結合)方式以外の造形方法でも製作は可能ですが、経年劣化の影響は不明ですのでご注意ください。
ケース製作は弊社でも受託できますのでお問い合わせください。
お問い合わせは下記問い合わせフォームがご利用になれます。
またこの記事に関するお問い合わせも下記フォームからお願いいたします。
【この記事を書いた人】
稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
ファクトリー・サイエンティスト No,00385
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。
【過去に書いた記事】
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弊社ではロストワックス精密鋳造品を主としたニアネットシェイプ素材の切削加工、研磨加工、放電加工を受託加工しています。
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