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3Dスキャナーの測定精度 | 設計サプリNO,32

[掲載日]2023.10.16

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設計者のみなさま、いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
弊社では、私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第32回目は「3Dスキャナーの測定精度」です。

設計者のみなさまは3Dスキャナーを利用されてますでしょうか?
曲面形状の評価に良く利用される3Dスキャナーですが、精度について不明な点もあるようです。今回は公設試験研究機関(産業技術センター)にて3Dスキャナーで画像測定をする機会がありましたので、その中から3Dスキャナーの精度に関する実験結果を紹介します。

3Dスキャナーとは

3Dスキャナーとは光学式非接触3次元測定システムとも呼び、カメラで撮影された画像データにより正確な3次元座標が取得できる測定機です。
直交形と非直交形があり、JISでは直交形はB7440-8で規定されています。非直交形はまだ規定はなく開発中のようです。今回の記事では、より測定の自由度が高い非直交形に着目して紹介します。

3Dスキャナーのメリット

3Dスキャナーを利用するメリットを紹介します。

薄くてこわれやすい製品も測定できる

写真のような薄くて柔らかい製品(材料は消失模型用のワックス)は壊れやすく、接触式の測定では難しくなります。
非接触の3Dスキャナーであれば測定が容易になります。

曲面形状の比較ができる

曲面形状を数値で評価するととてもわかりにくいです。
3DスキャナーであればCADデータとの比較をカラーマップにて視覚的に行えるので評価がしやすくなります。

データを保存しておけば後から必要な測定結果を調べられる

接触式測定機では現品が無いと測定しなかった箇所の数値を後で知ることはできませんが、3Dスキャナーであれば保存しておいたデータから好きな個所の測定数値を調べることができます。

3Dスキャナーのデメリット

デメリットも知っておく必要があるので紹介します。

光沢がある製品は測定できない

ピカピカして光を反射する製品はカメラから照射された光が乱反射してしまうためうまく測定できません。
後述するスマホケースなどがその代表的な製品です。
下記に示した画像のように何も処理せずに測定するとスカスカのデータしか取得できません。


何も処理しないと

スカスカのデータになる

対策として反射防止用スプレーを吹きかけて測定します。
吹きかけて測定するときれいに形状を取得することができます。
しかし、測定後に付着した白い粉を洗浄しないといけません。

反射防止用スプレーを吹きかけると

きれいにデータ取得できる

いままで何度も3Dスキャナーによる測定を行っていますが、3Dスキャナーのメリットで紹介しました青いワックスは何も処理しなくてもきれいに測定できました。

その他については

赤色のワックス ○
表面が酸化膜で覆われたもの(鋳物など) ○
透明なもの(アクリルなど) ×
金属加工品 ×

でした。

反射防止用スプレー

光沢がある製品は反射防止用スプレーを吹きかけて測定すると紹介しましたが、このスプレーは吹きかけ方にもよりますが0.02~0.03mmの膜厚があります。よって測定結果は膜厚分を考慮する必要があります。

三次元測定機と比較

接触式三次元測定機と3Dスキャナーの両方で測定し、誤差を確認する実験をしましたので紹介します。
測定対象は市販のスマホケース(アルミ製)です。とても薄く曲面形状をしていますので測定は3Dスキャナーが適しています。

しかし紹介しましたように反射防止用スプレーを吹きかける必要があります。
撮影している様子を写真に示します。

測定対象の製品は円形の台に載っていて回転します。
製品には3本のマグネットが付いています。これは回転しながら数枚撮像したときに各画像を合わせるためのターゲットになります。

スマホケースの全長と全幅の測定結果を比較した結果を下記します。

結果をみますと約0.04~0.06mm3Dスキャナーのほうが大きいことがわかります。これはスプレーの膜厚(0.02~0.03mm)を考えると丁度その膜厚分大きいことがわかります。よって今回実験で使用した3Dスキャナーは0.01mm程度の精度で測定できていると言えます。

測定結果の保証について

測定設備には校正証明と呼ばれる測定設備の保証書があります。この校正証明が無いと加工メーカーとしては品質保証ができません。
非直交形の3Dスキャナーは非常に便利な測定機ですが、冒頭に書きましたようにJISによる規格はまだ無く(ISOはあります)メーカーによる校正証明が無いものもあります。
よって3Dスキャナーを利用する場合、品質保証の方法については取引先様と別途取り決めをしておく必要があります。
事前に協議することをおススメします。

3Dスキャナーによる測定が必要な加工品についてはお問い合わせください

弊社では接触式の三次元測定機で評価することが多いのですが、接触式の三次元測定機では評価が難しい場合、3Dスキャナーによる評価を提案しています。
要求されている測定精度によって保証方法もご提案します。
保証方法についてわからないことがありましたら直接お問い合わせください。
お問い合わせには下記フォームがご利用になれます。

【この記事を書いた人】

稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
ファクトリー・サイエンティスト No,00385
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。

【過去に書いた記事】

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弊社ではロストワックス精密鋳造品を主としたニアネットシェイプ素材の切削加工、研磨加工、放電加工を受託加工しています。
設計検討中からでも相談に応じます。

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