【設計サプリ】その20(インコネル718と713Cの違い)
[掲載日]2022.10.14設計者の皆様
いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
このページでは
私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第20回目は「インコネル718と713Cの違い」です。
設計者の皆様はインコネルと言う材質はご存じでしょうか。
耐熱鋼として知られているインコネルですが、その種類は一つでなく沢山あります。
今回はこのインコネルと呼ばれる材質の中で弊社で取り扱うことが多い713Cと718について紹介します。
(1)性能の違い
日立金属株式会社が公開しています耐熱合金の資料によると
2006年7月作成 日立金属株式会社発行 HY-B19-(J,E)-E から抜粋
これを見ますと高温雰囲気での耐熱性能はインコネル713Cの方が高そうです。
(2)材料入手性の違い
材料の入手は流通材であれば比較的簡単に入手できます。しかしインコネル718は丸材など流通していますがインコネル713Cは
流通していないので鋳造などの方法で製造する必要があります。
弊社ではインコネル718での加工品をご注文であれば流通材を購入することが多く、インコネル713Cの加工品をご注文の場合は
鋳造メーカーに依頼し、素材を調達しています。
よってインコネル713Cの場合は調達リードタイムが長くなり、コストもかかります。
(3)加工工程の違い
インコネル718とインコネル713Cの加工工程の違いは熱処理をするかしないかです。
インコネル718は熱処理をしてその性能を発揮する材料の為、時効処理とよばれる熱処理を行います。
しかしこの時効処理をした後は加工がしにくくなる為、一般的には
固溶化処理⇒粗加工⇒時効処理⇒仕上げ加工
のような工程で加工することが多いです。
一方インコネル713Cは熱処理をしないでその性能を発揮する材料です。
よって素材入手後は加工のみの工程となります。
(4)切削性の違い
表はインコネル718(固溶化品)とインコネル713CをΦ5のドリルで加工実験したときの切削抵抗の比較です。
参考までにS50CとSUS304も掲載しています。
これを見るとインコネル713Cの切削抵抗は高く加工しにくいことが分かります。
(5)加工費の違い
材料費を含めた加工費の違いで、過去の実績を見ますと
素材の段階では流通材として入手できるインコネル718の方が安く、切削抵抗の違いから工具費もインコネル718の方が安いのですが
熱処理コストや加工工程の多さにより加工完成時点のコストは逆転することもありました。
サイズや形状によりケースは異なりますが、インコネル713Cの方が必ず高額とは限りません。
よってコスト優先でもインコネル713Cの製作もご検討ください。
材質の選定は最終的には設計者の皆様のご判断となりますが、参考にしていただければ幸いです。
【この記事を書いた人】
稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
ファクトリー・サイエンティスト No,00385
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。
(現在の主な使用ツール)
Rhinoceros
Fusion360
Ansys
【過去に書いた記事】
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弊社ではロストワックス精密鋳造品を主としたニアネットシェイプ素材の切削加工、研磨加工、放電加工を受託加工しています。
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