設計者の為の金型用語 | 設計サプリNO,47
[掲載日]2025.01.15設計者のみなさま、いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
弊社では、私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第47回目は「設計者の為の金型用語」です。
設計者のみなさまは製品の製作を依頼されたメーカーとの会話で金型用語を使われたことがあるでしょうか。
金型用語は知っていると会話の意図が良くわかります。
今回は金型用語について紹介します。
なぜ金型用語を知っておく必要があるのか
金型用語は金型の設計者や製作者が良く使う用語を総称して言います。
製品の設計者はメーカーからの要望を聞く場合、金型用語を使って説明されることがあるため、金型用語を知っていると意図が理解しやすくなります。
今回の記事は100円のおもちゃを例に金型用語を紹介していきます。
意匠面とパーティングライン
金型用語で「パーティングライン」と言う用語が良く使われます。
パーティングラインは金型の割面のことで成形した製品にラインが入るところです。またわずかに段差がつく場合があります。製品の価値として見た目をきれいにしたい面を意匠面と呼び、この意匠面にはできるだけパーティングラインがつかないように配慮します。しかし金型設計上やむ負えない場合、パーティングラインを付ける場所を決めるためのやり取りが必要になります。
コア側キャビ側
「コア」と「キャビティ」と言う用語があります。
パーティングラインで分割された金型の片側凸をコア、もう一つの凹をキャビティと呼びます。
よって製品は凸の方をキャビティ、凹の方をコアと呼び、コア側/キャビ側などと呼んでいます。
金型を開いたときに金型側にくっついて残る方がコア側なので、コア側には後述する金型から押し出すためのエジェクターピン(製品を押し出すピン)跡が残ります。
ピン跡とぼかし
エジェクターピン跡(ピン跡)はコア側に跡が残ると書きましたが、写真のように丸いラインが残ります。
写真では丸いラインに直線状の傷が見受けられます。これはピン跡とコア形状の段差を無くすために手作業で削った後です。このような作業を「ボカシ」などと呼んでいます。
バリ
「バリ」と言う用語は金型用語に限らず使われます。
金型でのバリはコアとキャビティが本来隙間なく密着すべきところ、隙間が空いてしまった場合発生します。
製品の内側などで隠れてしまう場合、機能上問題なければそのままにしておくことがあります。
エッジまたはピン角(ピンカド)
「エッジ」または「ピン角」は鋭く尖った箇所を言います。実務上はR0.1以下のカドをそのように呼ぶことが多いです。二つの部品をつなぎ合わせた時、隙間が目立たないようにするためにもエッジは必要です。
インローまたは篏合(かんごう)
「インロー」または「篏合」は二つの部品をはめ合う箇所に使う用語です。
はめ合ったときガタ無く組まれている場合は「しっくりしている」、少しガタがある場合は「グスイ」などと感覚を表現する用語もあります。
利用事例:この篏合はグスくても良い
カッターマーク
「カッターマーク」は切削工具で金型を削った跡が製品に転写され粗いスジとして見える箇所を言います。意匠面の場合は品質上問題がありますので金型を磨いてカッターマークを消しますが、コア側などの見えない箇所はコストダウンの為そのままにしておく場合があります。
ゲート跡
ゲート跡は溶けた樹脂を流し込む口です。成型後ニッパなどで切り取るのでわずかにバリが出ることがあります。
ゲート跡もできるだけ目立たない箇所に設けます。
鋳造品でも同じ用語で良いのか
上記の金型用語は100円のおもちゃを例に紹介しました。
プラスチック製品以外ではロストワックスなどの鋳造品でも金型用語を使用します。
基本的に使用する用語は同じですが少し異なる用語もありますので紹介します。
湯口跡
湯口跡は溶けた金属を流し込む口です、プラスチック製品の場合はゲート跡と呼ぶ箇所です。
鋳造製品の湯口跡は後述する加工しろと一緒に削り取ってしまう場合があります。
加工しろ
金属製品を製造するための鋳造は鋳造後穴や精度が必要な形状を工作機械で削り取って仕上げることが多いです。
この削り取る場所にはあらかじめ加工しろ(余肉とも言う)を設けます。
加工しろは設計者の皆様が指定される場合もありますが、メーカー側が提案する場合もあります。
加工しろについては加工しろを設計してワンランク上の図面を描く | 設計サプリNO,39でも紹介しています。
まとめ
今回は金型用語を紹介しました。
これからメーカーとのやり取りを始められる設計者の皆様は是非参考にしてください。
私たちメーカーはいつも使っている用語なので普通に使っていますが良くわからない場合は遠慮なく質問してください。
設計中のお問い合わせも受け付けています。
お問い合わせは下記フォームがご利用になれます。
100円のおもちゃは教材になる
100円のおもちゃは分解してみると構造がシンプルなので金型構造の勉強になったり機構設計の参考にもなります。
たまに購入して分解してみることをおススメします。
観察が終わったら忘れず元通り組み立てておきましょう。
組み立てやすさなども観察できます。
【この記事を書いた人】
稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
ファクトリー・サイエンティスト No,00385
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。
【過去に書いた記事】
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