測定リスクとなりやすい設計(架空点編)| 設計サプリNO,41
[掲載日]2024.07.15設計者のみなさま、いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
弊社では、私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第41回目は「測定リスクとなりやすい設計(架空点編)」です。
設計者のみなさまは図面を描くとき架空点を使われることがあると思います。
実は架空点は測定リスクが高く、トラブルの起きやすい表現方法です。
今回はこの架空点に関する測定リスクを紹介します。
架空点とは
形状の無い交点や中心線のことを架空点と呼んでいます。(仮想点とも呼びます)
機能を表すために便宜上使用されるもので、この架空点に寸法を表記したものを架空点寸法などと呼んでいます。
この架空点寸法、形状が無いため測定に苦慮することがあります。
架空点寸法の描かれた図例を以下に示します。
図1
図2
架空点寸法を測定するには
架空点寸法は形状が無いため、ノギスなどの一般的な測定機を使って測定することができません。
測定するためには投影機や3次元測定機を使用します。
投影機
投影機は大きなスクリーンがあって、測ろうとする部品をスクリーンいっぱいに拡大投影します。
数十倍に拡大してスクリーン上に投影し、トレーシングペーパーに正確に作図したマスター図面と比較して合否を判定する測定機です。
上記図1のような透過できない(底のある)形状は測定が難しくなります。
投影機
画像測定機
最近では画像測定機が多く利用されます。
投影した輪郭を自動認識し、架空点も計算します。
しかし、上記図1のような透過できない(底のある)形状は測定が難しくなります。
画像測定機
3次元測定機
3次元測定機はプローブと呼ばれる測定子を測定したい形状に接触させて直径や点を計算により求めることができる測定機です。
透過できない(底のある)形状も測定が可能です。
測定できる形状から計算によって架空点寸法を数値ができるため、架空点寸法の測定には多く使用されます。
3次元測定機
なぜ架空点寸法は測定リスクになりやすいのか
3次元測定機などで架空点寸法を測定するとき、測定できる形状が少ないと計算結果がばらついて、何度測定しても異なった値が出てきます。
これが測定リスクとなります。
下図のような事例の場合、±0.05で指定された公差を測定保証するためにはθをいくらにすれば良いのでしょうか。
実際に測定した結果を以下で紹介します。
どのくらい誤差がでるのか実験しました
測定できる形状が少ないと計算結果がばらつくと書きましたが、どのくらい少ないと測定リスクになるのか3次元測定機で実験しましたので紹介します。
あらかじめ寸法が保証してある直径50㎜のリングゲージを使用します。
測定素形状の範囲(θ)を変化させながら直径50㎜の測定誤差と架空点となる中心位置のバラツキを調べました。
測定結果
結果を見ますと45°までは誤差が0.002㎜までに収まっています。
3次元測定機は0.001mm程度の誤差はあるので、この結果から45°までは架空点を原因とした測定リスクは少ないと考えられます。
一方30°を下回ると誤差が大きくなり、10°では明らかにおかしい数値となりました。
事例で紹介したような±0.05㎜を公差とした場合、正しく評価できるのは20°まで、できれば30°以上必要と考えられます。
簡易的に測定する方法もあるけど
高価な測定機を使わずに簡易的に測定する方法もあります。
測りたい径より少し大きく、あらかじめ径がわかっているピンを円弧に押し付けて隙間の寸法tをノギスなどで測定する方法です。
計算式を以下に示します。
tの寸法をノギスなどで測定し上記の式で計算するとRを求めることができます。
簡単に測定できそうですが、図示しているエッジが無いと正しく測定できません。
また、隙間の測定は意外と難しく、弊社ではこの方法を用いた測定は行いません。
しかし、この式からもθの値(式の中ではLの値)が小さくなると測定が難しくなることは想像できると思います。
【参考文献】
測定器の使い方と測定計算 1990年再版 発行:大河出版 ツールエンジニア編集部編著
129p
測定が難しい場合お問い合わせください
今回紹介したような円弧形状の一部を残し架空点寸法を設計される場合、30°以上形状を残して設計いただくことをお勧めします。
しかし、設計制約上難しい場合もあると思います。
その場合は別途評価方法を取り決める必要があります。
弊社では評価方法の提案も含め寸法保証いたしますのでお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせは下記問い合わせフォームがご利用になれます。
3次元測定機が新しくなりました
今回測定で使用した3次元測定機は2024年3月に更新した測定機です。
ミツトヨ製CRYSTA-ApexV7106
測定範囲 X700mm,Y1000mm,Z600mm
保証できる測定精度は1.7+3L/1000μmです。
今回の記事で紹介した測定数値も上記を上限とした誤差が含まれます。
【この記事を書いた人】
稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
ファクトリー・サイエンティスト No,00385
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。
【過去に書いた記事】
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弊社ではロストワックス精密鋳造品を主としたニアネットシェイプ素材の切削加工、研磨加工、放電加工を受託加工しています。
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