簡易図面の書き方 | 設計サプリNO,40
[掲載日]2024.06.17設計者のみなさま、いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
弊社では、私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第40回目は「簡易図面の書き方」です。
設計者のみなさまは図面を描くときJISの規格に従って図面を書かれていると思います。
弊社のような加工メーカーでは社内で作る金型や治工具図面は自社で設計しますので、規格にはこだわらず、できるだけ短い時間で作図できるように簡易図面で書くことが多くあります。
簡易図面を使うことで設計者のみでなく製作者にもメリットを生み出します。
今回はこの簡易図面について紹介します。
簡易図面とは
寸法作図量の少ない図面を簡易図面(省力化図面)などと呼んでいます。
JISの規格通りに製図するとなると、幾何公差の記入や表面粗さ記号などを記載する必要がありCADのプロパティを多く開くことになります。
製作者に上手く伝えることができるのであれば簡易的な書き方でもいいので早く現場に図面を出した方が設計者、製作者ともメリットありますよね。
以下ポイントと具体的な事例をもとに簡易図面を紹介します。
また「加工しろを設計してワンランク上の図面を描く | 設計サプリNO,39」で紹介した表現方法と大きく違うことも注目ください。
目的に合わせて使い分けます。
簡易図面のポイント
簡易図面のポイントを紹介します。
スケールは1/1で描く
1/1で描いておくとデータで位置、形状を拾えるので便利です。CADデータを利用しやすくするのが目的で、結果として寸法を省略することができます。
公差は桁数で表現する
正しく機能すれば良いと言う考え方に基づきます。
公差は描かず桁数で表現します。
詳しくは下記の作図事例を参照ください。
穴は公差でなく用途で描く
用途を描くことで必要な公差や表面粗さが推測できます。
結果として公差を省略することができます。
できるだけ加工方法を描く
使用する工作機械で公差はある程度決まるので工作機械を決めることで公差も決まり省略することができます。
(例)
研磨する→精度必要
フライスで加工する→ラフで良い
ワイヤーカット→カット数で精度を表現
製作者側にもメリットがあること
簡易図面は設計者だけメリットあっても成立しません。
曖昧な部分を残しておくことで製作者の都合で変更しても良い部分を作り、作業がしやすいようにします。
簡易図面の事例(ボール盤治具)
具体的な事例を使って簡易図面を紹介します。
事例はピンに横穴を加工するためのボール盤用治具です。
市販のクランプボルトを使ってクランプする治具で、ガイドとなる治具ブッシュを使って加工します。
以下それぞれの部品ごとに簡易図面を紹介します。
ボール盤治具
ベースプレート
ベースプレートは治具を起立させておく為の台です。
後述する本体を固定するボルト穴が4か所あります。
簡易図面の書き方としては用途を示す「ボルト穴」と表記します。
何の穴かわかると製作者側が求められる公差が推測できます。
また、図をみるとおわかりのようにサイズ公差が書いてありません。
寸法値小数点以下1桁は一般公差、小数点以下無しは出来なりで良いことを示しています。
小数点以下2桁の場合は精度が必要(±0.01)を示します。
(例)
10→出来なり
10.0→一般公差
10.00→±0.01(勘合部であればガタなくスルスル入る)
作図方法の一つとして座標リストがあります。
穴加工するとき、マシニングセンターに座標を打ち込みますが表形式だと間違いが起きにくいため利用しています。別のメリットとして座標表にすることでひとつひとつ寸法を入れる作業を省略することができます。
本体
本体は加工方法によって作図方法が変わりますが今回はワイヤーカットを利用します。
ワイヤーカットについては【設計サプリ】その11 (ワイヤーカット加工部品設計入門)を参照してください。
ワイヤーカットで加工する場合、求める精度によって1stカットや3rdカットなどと言う表現で精度を表します。
ワイヤーカットは最後に切り落としが発生します。切り落とす箇所にへそが残るので、残ってよい箇所の範囲(ラフで良い範囲)を図示します。
押さえ金具
押さえ金具は本体と同じようにワイヤーカットを利用しますので同様な作図方法を用います。
切り粉を逃がす溝がありますので「逃がし穴」などのような用途がわかる表現を用います。
(ラフで良いという意味になります)
押し上げピン
押し上げピンはバネで押さえ金具を押し上げる仕事をします。
旋盤での加工となります。
購入品
金型や治工具は市販の部品を利用することが多くあります。
型番などネットで検索できる情報を組図などに記載しておきます。
製作担当との打合せ
紹介した簡易図面は製作前に事前の打ち合わせ、取り決めが必要です。
外角の面取りなど全く図示していませんが、作業者がケガしないようにカドは面取りが必要です。
よって事前の打ち合わせに面取りの加工方法も確認しておきます。
お断り
今回の記事で紹介した簡易図面は設計者と製作者の合意をもとに行う製図方法です。
打合せ無しで通用する方法ではないことをご理解いただき、ご了承願います。
設計者のみなさまの一助になれば幸いです。
簡易図面での製作はお問い合わせください
自動機部品など大量に図面を製図される場合、製図作業が膨大になることがあります。
弊社では簡易図面での製作も承ります。お気軽にご相談ください。
ご相談の場合は下記の問い合わせフォームが利用できます。
【この記事を書いた人】
稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
ファクトリー・サイエンティスト No,00385
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。
【過去に書いた記事】
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