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【設計サプリ】その19(ボルトの締め付け力の計算と実測を比較)

[掲載日]2022.09.15

設計者の皆様

いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
このページでは
私たちが見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第19回目は「ボルトの締め付け力の計算と実測を比較」です。

設計者の皆様は設計でボルトはよく使われると思います。
私たち加工屋も加工時製品を固定するときによく使います。
このボルトのクランプ力を理解することは治具製作において重要でコストにも影響します。
ではこのボルト、どのくらいの締め付け力があるのかご存じでしょうか。
今回はボルトの締め付け力を実測し、計算結果と比較する実験を行ってみましたので紹介します。

【ボルトの締め付け力の計算方法】

ボルトの締め付け力の計算は文献を参考にすると下記のようになります。

参考文献:1991年発行 機械設計演習 産業図書 岩波繁蔵編著 p47~49 を基に筆者作成

ではこの計算は実測とどのくらい違うのか調べるため写真1のような実験機材を用意してみました。

写真1

この実験機材を図にすると図1のようになり、ボルトの締め付け力で発生した力でフォースゲージを押し込みフォースゲージにかかる力を測定します。

図1
フォースゲージに作用する力を計算する為、この構造を模式化し静定ラーメンに見立てて締め付け力Fから反力Va求める式を作ります。
静止している構造のモーメントの総和はゼロであることから
点bを中心としてΣM=0 
Va×45㎜-F×30㎜=0
(VbとHbは距離がゼロなので省略)
式を変形して
Va=F×30/45=F/1.5——–(2)

図2(模式図)

(1) 式の結果を(2)式に代入すると
Va=1735(N)
となります。

【実測結果と比較】

この(2)式の計算結果を実測と比較します。
(1) 式で使用する摩擦係数は0.15~0.25と幅があるので今回は0.15と0.2の2通りで計算しています。
ボルトを締めるトルクはデジタル式トルクレンチを用い1~3N・mとしました。

この結果を見ると摩擦係数0.15が実測に近いことがわかります。
このくらいの差であれば上記(1)式は実務でも活用できそうです。

尚この実験ではボルトにワッシャーを使用していません。
ワッシャーを使用すると摩擦係数の変化により締め付け力がUPする傾向になります。

設計者の皆様の一助になれば幸いです。

【この記事を書いた人】

稲田聡(いなたさとし)
株式会社ナカサ 開発室長
ファクトリー・サイエンティスト No,00385
1966年島根県安来市生まれ
1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。

(現在の主な使用ツール)
Rhinoceros
Fusion360
Ansys

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