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図面注記の書き方「有害な付着物、汚れなきこと」の場合|設計サプリNO,26

[掲載日]2023.04.17

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設計者のみなさま

いつもお世話になっております。
株式会社ナカサ見積り担当です。
このページでは弊社が見積りする中で経験したコストダウンに関する情報を「設計サプリ」と題してご紹介させていただきます。
第26回目は 図面注記の書き方「有害な付着物、汚れなきこと」の場合 です。

見積りをしていますと、図面の注記欄に、「有害な付着物、汚れなきこと」と書かれていることがあります。
設計者の皆様もこのような注記を書かれたことがあるのではないでしょうか。
今回は図面注記の書き方について「有害な付着物、汚れ」と書きたい場合を紹介します。

有害な付着物、汚れとは


有害な付着物、汚れとはどのようなものを指すのでしょうか。
有害な付着物、汚れとは加工した部品を付着物が付着したまま組み付けすることにより、動作不良や性能低下を招くものとしてよく表現されます。
コンタミネーション、略してコンタミとも表現されることもあります。

機械加工工場で発生する付着物

弊社のような機械加工工場で行う製造工程の中でどのような付着物が発生するのでしょうか。事例として下記が挙げられます。

  • 切削液
  • 切りくず
  • 梱包材の破片
  • 切削液

    加工中は冷却と潤滑をするために切削液を吹きかけながら切削することがほとんどで、必ずといっていいほど切削液は付着します。
    切削液もいくつか種類があり、大きく分けて、油性、水溶性の2種類があります。
    油性切削液はベトベトした液体で、蒸発しないため残りやすく、また工場内の作業環境も悪くなるので、弊社では水道水で希釈して使用する水溶性切削液を主に利用しています。
    水溶性切削液は蒸発して残りにくい利点があります。

    切りくず

    金属を加工する場合、ドリルやエンドミルで切削しますので加工した切りくずが付着します。
    切りくずは切削方法により様々な形のものが発生しますが、小さな切りくずは加工後も付着したままになることが多いです。

    梱包材の破片

    出荷時に使用する梱包材も有害な付着物になる可能性があります。
    梱包材の切断片などが梱包作業時に混入することがあるためです。

    有害な付着物、汚れを無くすための対策

    有害な付着物、汚れを無くすための対策としては弊社の事例として下記が挙げられます。

  • 洗浄
  • 白い手袋
  • 決められた梱包材を使用
  • 洗浄

    出荷前には必ず洗浄を行います。
    超音波洗浄などの機材を使用し、規定された時間以上洗浄を行います。

    白い手袋

    洗浄後の作業では、作業者は白い手袋を着用します。
    手袋着用により付着物を発見しやすくし、皮脂などの付着物も防止します。

    決められた梱包材を使用

    梱包材は切断片などが混入していない決められた資材のみを使用します。
    また、日本工業規格による視作業は500ルクス以上の明るさで作業することが推奨されています。弊社も規定された明るさの作業台で梱包作業しています。

    洗浄しても付着物が残る場合がある

    水溶性の加工液は原液を水道水で20倍程度に希釈して使用します。

    実は、水溶性切削液は、使用する水道水の水質によっては洗浄しても残る可能性があるのです。

    弊社で実験したのでご紹介します。
    TDS(水に溶け込んでいる物質の濃度)値が290ppm(a)と36ppm(b)のミネラルウォーターを使って行った実験です。

    (写真2)4%程度の濃度で希釈

    それぞれ4%程度の濃度で希釈しました。
    希釈した後の様子を見ると一見差は無いように見えますが、後ろからライトを当てると透明度が違うことが分かります。

    (写真3)後ろからライトを当てる

    いずれも4%の原液を入れて希釈していますが、TDS値の高い(a)の方は溶け込みが少ないようです。
    しばらく(1日)放置してみると、(a)の方は白い固形物がコップの淵の方に浮いているのが分かります。

    (写真4)1日放置したところ

    一方、(b)の方は変化が見られません。
    さらに、この水溶液を金属片に付着させて乾くまで観察しました。

    (写真5)金属片に付着させる

    (a)の方は、白い付着物が見られます。
    (b)の方は、ほとんど分かりません。

    (写真6)乾燥後

    このように、水質によって差があることが分かります。
    この固形物がネジ穴などに固着することにより洗浄した後も残る可能性があるのです。
    島根県安来市にある弊社の水道水のTDS値を調べてみると、38ppmと(b)に近いことが分かっています。

    日本は軟水の地域が多いので(a)のような危険性は少ないと考えていますが、基礎知識として紹介しました。

    付着物の検出方法

    出荷前に行う付着物の検出はどのような方法かと申しますと、弊社のような加工工場では寸法検査以外に「官能検査」と呼ばれる五感を使った検査を行うのが一般的です。
    この官能検査は、目視(肉眼)や触指(手で触る)によって付着物を検出します。

    官能検査については以下のページで解説されています。

    参考元:製造業での検査の基本となる官能検査について教えてください。|J-Net21

    目視検査は個人差があります。
    弊社の場合、個人差を減らすため 標準チャートと呼ばれるカードを使用し30㎝以上の距離で読めることを検査員の基準としています。

    標準チャートについてはamazonでも販売されていますので以下のページを参照ください。

    参考元: Graham-Field イエガー読み取りとテストタイププラスチックチャート|amazon

    弊社の検査員は決められた期間教育訓練を受けます。標準チャートを使用することで教育訓練の精度を上げお客様へ流出しないようにしています。

    図面注記の書き方

    図面にはどのように注記を書けばいいのでしょうか?
    官能検査で検出できる付着物が除去してあれば機能的に問題ないと判断できる製品を設計されている場合、図面注記には何も書かなくて構いませんが、何か書いておきたいと思われる場合は 「目視で検出できる付着物、汚れ無きこと」と書かれることをお勧めします。

    目視で検出できない付着物が機能障害を起こすような製品を設計されているであれば 「○○倍の拡大鏡で検出できる付着物、汚れ無きこと」と記載していただくことをお勧めします。

    上記の○○倍はいくらにすれば良いか、付着物や汚れ以外にも「錆」に関することなどわからないことがありましたらご提案しますので直接ご相談ください。
    ご相談いただく場合、下記フォームがご利用になれます。

    今回の記事をPDFでご覧になりたい場合はイプロスものづくりにアップしてありますのでダウンロードしてください。

    【この記事を書いた人】

    稲田聡(いなたさとし)
    株式会社ナカサ 開発室長
    ファクトリー・サイエンティスト No,00385
    1966年島根県安来市生まれ
    1989年からCADによる設計に従事し、当時は自動車のインパネ部品で基板やプリズムなど設計していました。
    1991年から現在の会社で主に金型設計で3次元CAD/CAMを利用するようになり30年間複数のCAD/CAMと格闘した経験を持ちます。
    現在はコストプラン、センサーを使ったデータ視覚化、インサイドセールスにも取り組んでいます。

    【過去に書いた記事】

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    弊社ではロストワックス精密鋳造品を主としたニアネットシェイプ素材の切削加工、研磨加工、放電加工を受託加工しています。
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